意思とコレクションとコンセプト

WHERE THERE IS A WILLL, THERE IS A WAY.

意思のあるところに、道はある。

この言葉は、この冬休みにずっと見ていた本の裏表紙に刻まれていた言葉です。

この本は2014年に閉館してしまった「KIYOSATO MUSEUM OF CONTEMPORARY ART」という小さな現代アートのプライベートミュージアムが蒐集してきた作品のアーカイブ本です。

4cmも厚みがあるこの本のテーマはEphemera(エフェメラ)。
本の説明によるとエフェメラとは、「一時的な筆記物および印刷物という意味。長期的に保存されることを意図していないものを指す小さな紙ものの資料」のこと。

招待状であったり、手紙であったり、カードであったり。 個人的にエフェメラが好きだということを差し置いても、小さいな紙面のなかにブランドやその人のらしさが凝縮されているものが多く見飽きません。

(via twelvebooks (この本のディストリビューションを担当)

閉館してしまった美術館には、長い間集められた膨大なコレクションがあって、そのままではただそこにあるだけになってしまう。
けれど、若い世代の人との出会いでこの本というかたちになり、多くの人の目にするところとなった。

「意思のあるところに、道はある」という裏表紙の言葉に、思いを繋いでいくことの大切さと同時に、「誰かに見てもらう=誰かのためになる」ということを意識する大切さも感じたのでした。

「誰か」というのは、ブランドで言うところのターゲットオーディエンスです。この本も、ある一定の条件に合う人たちを想定して作られています。その人たちが欲しくなるかたちで提供されています。

限りなく削ぎ落とされた装丁デザイン。無機質なグレーのボード紙に黒の活版印刷の文字がくっきりと浮かび上がります。そのまま置いておいてインテリアになる控えめで馴染む佇まい。

目に入る「ARCHIVE Ⅰ」の文字は、これから続編が登場する期待感と、コレクションをしたくなる読者の欲求を掻き立てます。

内容構成は、順序に意図を持たずに淡々と並べられている。そのものを映しとる高品質な画像。まるで、今は亡き美術館に訪れて、展示されたコレクションを見ているよう。
まさにそれが本の作り手の願いでもありました。

伝えたい人に向けて、コンセプトが伝わるデザインに表現されています。

すべてのブランド活動は、誰かのためになるものであるべき。そして、ブランドの中の人の本当に大切にしている思いを表現したものであるべきだと思います。

冬休みに眺めていた大好きな本から、スモールブランドにとっての大切なことを感じたのでした。

ちなみに、こちらのアーカイブ本「KIYOSATO MUSEUM OF CONTEMPORARY ART. ARCHIVE I: EPHEMERA」はⅡ、Ⅲとすでに企画が決まっていて、フルクサス、ヨーゼフ・ボイスと続くとのこと!とても楽しみです。

また、今回の本は、昨年11月のTOKYO ART BOOK FAIRにて企画展「Kiyosato Museum of Contemporary Art Archive Project」として紹介されて観てきました。現物を実際に間近で見ることができ、木の什器も素敵で印象的でした。

TABFでの展示の様子
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